【完全版】性同一性障害の治療完全ロードマップ

身体的な性別と「私の性別は○○だ」という性自認が一致していない、性同一性障害(GID)。

なかには性自認に合わせて、性別適合手術を行いたいと考える人が多くいます。
しかしそれにはいくつかの過程を経なければなりません。

この記事では、具体的に治療を考えている当事者の方、当事者がどのような過程を経るのかを知りたい家族の方に向けてFTM・MTFの性適合手術の過程を詳しく解説します。

目次

性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン

具体的な治療の流れを解説する前に、まず性同一性障害の治療に関するガイドラインについて紹介をします。
それが「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」です。そのままですね。

このガイドラインは、性同一性障害学会が公表しているもので、治療や診断の基準や手順、年齢などによる制限などが明記されています。医療機関や医療従事者に対する性同一性障害の治療指針として示されていますが「絶対のルール」ではありません。

そのため、必ずしもこのガイドラインに沿って治療しなければならない、ということではないのが現状です。
しかし、性同一性障害の治療(特に性別転換)は後戻りができないものです。
だからガイドラインに沿って慎重に治療を進めることをオススメします。
※この記事でも基本的にガイドラインに則った治療について解説します。

性同一性障害の治療ロードマップ

それではここからは「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」に沿った、性同一性障害治療の手順を解説します。
まずは大きな流れから。

STEP
カウンセリング

一般的に、まずは精神科にてカウンセリングから。
カウンセリングを通じて、性同一性障害なのかどうかを専門医が判断をします。
そしてカウンセリングを経て2名の専門医からの診断書をもらうことで、身体の治療に移行することができます。
また、改名の手続きも可能になります。

STEP
身体検査

身体的な治療に入る前に、身体的検査を行います。
生物学的に、染色体や生殖器に異常がないかどうかを診断するための検査です。
身体的性別が女性なら産婦人科、身体的性別が男性なら、泌尿科で行きます。(当事者としてはかなり地獄の時間です)

STEP
身体的治療

専門医2名からの診断書をもらい、身体的異常が特に認められなかった場合、身体的治療に入ります。
ホルモン治療、通称「ホル注」や生殖機能の切除手術、FTMであれば、胸のふくらみをなくす、通称「胸オペ」、戸籍の性別の変更に必要な性別適合手術など、人によってどこまで治療を行うかは様々です。

性同一性障害のカウンセリングってなにするの?

性同一性障害のカウンセリングってなにするの?

カウンセリングでは、過去⇒現在⇒未来に向けて性別に関してどのように感じてきたのか専門医と話しながらどのように治療を進めていくかを決めます。


過去のことを話す際に必要なのが「自分史」というもの。
産まれてから現在にかけての病歴や性に関して精神的・身体的・社会的な出来事を書いて、専門医に提出します。

そして現在、どの性で社会的生活を営んでいるか、すでに自認している性別での実現ができているのか、自認している性別での生活に対して揺るぎがないか、などを確認します。
そして今後どのような性別で生活をしていくか、身体的治療はどこまで行うか、などを話し合い、診断書をもらうことで身体的治療に移ります。

GIDの身体的治療ってなにするの?

GIDの身体的治療ってなにするの?

性同一性障害の身体的治療とはどのようなことをするのでしょうか?
人によって、どんな治療をどこまで行うか違うので、ここでは一例として紹介をします。

ホル注

まずは、FTMであれば男性ホルモン、MTFであれば女性ホルモン注射をします。


通称「ホル注」と呼ばれるもので、定期的にそして性別適合手術を行ってからも長期的に投与をする必要があります。

ホルモン注射によって、FTMの場合は体毛が濃くなったり、声が低くなったり、筋肉量や体重が増加したりと身体が男性化していきますMTFの場合は、体毛やひげの減少、乳房の増大、筋肉量の減少など身体が女性化していきます。


どちらにも深部静脈血栓症、心不全、心筋梗塞、脳梗塞、肝機能障害などの副作用が起こる可能性もあるため、定期的に血液検査などをして身体に悪影響がないかを観察しながら進める必要があります。
身体の男性化や女性化の度合いや変化のスピード、副作用がどの程度起こるかどうかには、個人差が大きいものです。

胸オペ

FTMの場合には、胸を取る手術「乳房切除術」を行います。通称「胸オペ」です。


胸オペを行うタイミングは人それぞれです。ホル注の前に行う人もいれば、ホル注を始めて一定期間経ってから行う人、下半身の性別転換手術の際に同時に行う人など様々。
専門医と相談しながら、胸オペを行うのか、行うならどのタイミングで行うかを決めます。

性別適合手術

身体的な治療としては、最終的に性別適合手術を行うことになります。(行った後もホルモン治療は続きます。)


性別適合手術を行うには、性別適合手術適応判定会議という場で承認される必要があります。
基本的に問題なくホルモン治療が行われて、1年以上ホルモン治療が継続していて、専門医からの診断書があれば承認されるものです。

FTMの場合は、卵巣・子宮摘出、尿道延長術、膣閉鎖術などを行います。戸籍の性別変更に必要な条件である卵巣・子宮摘出までを行う人が多いです。


MTFの場合は、精巣摘出術、陰茎切除術、造膣術、外陰部形成術などを行います。

身体的治療は、始めると後戻りが難しくなります。
そのため身体的治療に入る前には、慎重に専門医と相談をしましょう。また、戸籍の変更まで望むかどうか、によってどこまでの治療が必要なのかが大きく変わってくるので、その点も相談をしながら進めていく必要があります。

慎重に、ガイドラインに沿った治療を

冒頭でも紹介した通り、性同一性障害の治療にはガイドラインがあります。しかしこれは絶対のルールではなく、この通りでなくても治療を進めてくれる病院も存在し、早く治療を進めたいがためにそのような病院に行く人も。
しかし、絶対にオススメしません。
なぜなら身体的な治療は、不可逆的だからです。
ホルモン治療によって身体が変化したり、胸オペや性別適合手術によって一度身体の形を変えてしまったら、元に戻すことはとても難しくなります。後悔をしても手遅れになります。

だからこそ、治療を行う前に専門医に相談し、治療のメリットデメリット十分に理解したうえで治療を進めましょう。

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