【経験者が語る】FTMホルモン治療のメリットデメリット

「ホルモン治療をしたいけど、どんな効果があるのか分からない」「副作用が心配」「始めたけど思っていたのと違う…」

そんなあなたに性同一性障害のホルモン治療(通称「ホル注」)の効果やメリットデメリット、副作用などを、現在ホルモン治療を継続中の私の経験談も交えて紹介します。
※この記事ではFTM・FTXに絞って紹介します。

目次

ホルモン治療とは?

性同一性障害でのホルモン治療とは、性ホルモンを注射によって投与することによって身体を望む性別の形へと近づけるものです。


FTM(身体が女性で、性自認が男性)であれば男性ホルモン、MTF(身体が男性で、性自認が女性)であれば、女性ホルモンを投与します。

FTMのホルモン治療とは?

FTMまたはFTXの場合は、男性ホルモン(テストステロン製剤)を筋肉注射によって投与します。


本来、男性ホルモンのうち95%をしめるのが、テストステロンというホルモンです。このほとんどが睾丸・精巣から分泌されています。
女性には睾丸・精巣がありません。女性の場合は卵巣でテストステロンが分泌されていますが、血中のテストステロン値を比べると男性の5~10%と言われています。

そのため身体的には女性であるFTM・FTXが性自認に合わせて身体を男性に近づけるには定期的に男性ホルモンを外から投与する必要があるのです。

ホルモン治療を行える条件は?

実は日本の法律上では、ホルモン治療を行うための条件は特にありません。


しかし「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」に年齢や医師の診断などの条件が設定されており、ほとんどの病院がそのガイドラインを遵守しています。
そのため、この記事でもガイドラインに沿った条件を紹介します。

ホルモン治療を行える条件
  • 年齢条件:18歳以上(条件付きで15歳からも可能)
  • 手続き上の条件:専門医からの診断書
  • 親権者の同意(未成年の場合)

では、1つずつ解説します。

ホルモン治療をスタートできる年齢条件

ホルモン治療を行える年齢は、原則18歳からです。

しかし2011年に改訂された「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(第4版)内で、条件付きで15歳からホルモン治療が行えるようになっています。
これはには思春期真っ只中、または思春期以前の段階で、性同一性障害に関する悩みを持つ人が多く受診するようになった、という背景があります。
二次性徴を遅らせる治療についてもガイドラインの明記されています。

18歳未満で開始する場合には相当な慎重さが求められるため、医療関係者の慎重かつ適切な判断のもと、2年以上ジェンダークリニックで経過を観察し、特に必要であると認められた場合に限定されます。

18歳以上であれば、基本的に次に紹介する書類を揃えればホルモン治療を開始できます。

ホルモン治療をスタートに必要な書類

ホルモン治療をスタートするのに必要な書類は、ずばり「専門医からの診断書」です。

まずはカウンセリングから始め、身体検査をしたうえで「性同一性障害である」「身体的治療を行っても社会的、身体的に問題がない」という旨を書いてもらいます。

また、ホルモン治療を始めるにあたって、医者から身体的変化や副作用などについての説明をきちんと受け(インフォームド・デシジョン)、「私はちゃんと説明受けましたよ。副作用も理解したうえで治療始めますよー。」と示すために、サインをします。

20歳以上であれば、これで晴れてホルモン治療がスタートです!
※よく勘違いされますが、ホルモン治療や乳房切除を行う場合には診断書は1枚で大丈夫です。2名の医者からの診断書が必要なのは、性別適合手術を行う場合です。

18歳~20歳未満の方は、さらに必要なものがあります。

親権者の同意書

18歳以上であっても未成年の場合には、親権者、そう親の同意書が必要です。


そして親権者が2人、つまり両親がいる場合には2人両方から同意をもらわなければなりません。
多くの人にとって、ここが大きな関門になります。
だから20歳になってから身体的治療に入る、という方も少なくないのです。

20歳になるまで待てない、早く治療を始めたい、という場合にはゆっくりしっかりと親と話し合うしかありません。
厳しい話ですが、どちらかしかありません。
20歳まで我慢するか、親にしっかりと自分の気持を伝えて理解してもらうか。しんどいかもしれません。
親が泣いてしまう場合もあります。泣きながら話し合いをした、そんな体験をしている性同一性障害の方の話をよく聞きますし、私の母も泣いていました。
少ししんどいかもしれませんが、前に進むためには避けては通れない道です。

同意書をもらえれば晴れてホルモン治療のスタートです!!
それでは、ホルモン治療の種類と値段について紹介します。

ホルモン注射の種類と費用

男性ホルモン注射は主に3種類に分かれています。
短期持続型の「エナルモンデポー」と「テスチノンデポー」、長期持続型の「ネビド」です。

大半の方が、短期持続型の注射を投与しています。それは、125㎎を2~3週に1回投与するのが一番男性の生理的機能に近いためです。

より自然に近い形での変化を求めるなら半年程度の間は短期持続型の注射を打つのをオススメします。
身体の変化や三大欲求の変化が落ち着いてきたタイミングで、250㎎へ変更したり、ネビドに変更すると良いと思います。

ちなみに、長期持続型の「ネビド」を投与している方は非常に少ないです。
理由としては、費用が高いこと、扱っている病院が少ないことが挙げられます。

また、ネビドは初めてのホル注の際には打てないこともあります。
理由としては、ホル注の副作用の度合いが分からないうちは、長期持続型を打ってしまうのは危険だからです。
副作用が強く出てしまう人の中には、不眠になってしまったり、意識が飛んでしまう人もいます。
私生活に大きな支障をきたさないよう治療するためには、短期持続型を打ってみて様子を見てみるといいかと思います。
そして、身体の状況や病院に通える頻度などによって医師と相談しながら、どの種類のホルモンをどのくらい打つのかを決めていきましょう。

料金に関しては、病院によって金額が異なってきますので、実際にお世話になる予定の病院へ問い合わせてみると良いでしょう。初回は診察代が発生します。また、ホル注を行ていくうえで半年~一年に一度程度は血液検査を行う必要があります。これは、血中のホルモンの濃度が正常であるか確認するためです。
数値次第では、ホル注の間隔を変更していくことになります。

ちなみに、性別適合手術を終えて戸籍上の性別の変更が完了すると短期持続型のホル注は、保険適用になり安く打てるようになります。ネビドは、保険適用外なのでご注意ください。

ホルモン治療による効果

ホルモン治療による効果

ホルモン治療のメリット(プラスの効果)

・筋肉量・体重の増加
⇒明らかに筋肉がつきやすくなります。ホル注開始直後は太る傾向にあります。

・毛が濃くなる
⇒すね毛、腕毛、わき毛などの体毛や、ひげが濃くなります。

・声が低くなる
⇒ 個人差はありますが、だいたいエナルモンデポーを3回ほど打ったあたりから、声がかすれ始め男子中学生のような変声期に突入してます。 半年から1年ぐらいすると低い声に安定します。

・陰核拡大
⇒陰核、いわゆるクリ〇リスが大きくなり「クリチン」と呼ばれるものに成長します。ボクサーパンツだと擦れて痛いこともあるので要注意です。

・月経がなくなる
⇒月経、いわゆる生理がとまります。こちらも個人差がありますがだいたい打ち始めて3か月目ぐらいです。ホル注を途中でやめてしまうとまた生理が来てしまうので注意です。

・食欲/睡眠欲/性欲の増加
⇒メリットと捉えるかは怪しいですが、食欲/睡眠欲/性欲は増加する傾向にあります。
特に性欲が強くなる人はとっても多いです。世の中に風俗が必要な理由がものすごく分かるようになります。
また体重が増えやすくなっているところに、食欲が増加するのでホル注開始数カ月は太る人が多いようです。

ちなみに身長は伸びませんのでご注意を。

ホルモン治療のデメリット(マイナスの効果)

もちろんいいことばかりではありません。デメリットも把握したうえでホル注を打つか判断しましょう。

・ニキビが増える
⇒皮脂の分泌量が増えるため、ニキビができやすくなります。声変わりと重なり、思春期真っ只中の中学生男子のような状態なイメージをしておいてください。

・体臭が変わる
⇒これも皮脂が増える影響で、なんとなぁく男くさくなります。

・はげる
⇒男性ホルモン値の上昇により、はげることも。

・内臓脂肪の増加
⇒女性は皮下脂肪がつきやすくなりますが、男性ホルモン値が高まると内臓脂肪がつきやすくなります。
月並みなアドバイスですが、適度な運動を心掛けましょう。

注意すべき副作用

次にあげるのは、特に注意が必要な副作用です。

・コレステロール値の上昇
⇒血中コレステロールが高まります。高すぎると動脈硬化など危険な病気の原因になるので要注意です。

・尿酸値の上昇
⇒高すぎると「痛風」となる尿酸値。痛風になると突然足が痛くなったりします。

・肝臓に負担がかかる
⇒男性ホルモンは肝臓で分解されます。今まで少なかった男性ホルモンが突然やってくるので肝臓は頑張って男性ホルモンを分解しようとします。その分負担がかかってしまい、肝臓が弱まり、肝臓病にかかりやすくなります。

・精神不安定
⇒ホルモンバランスが一時崩れるため、精神状態にも大きな影響を及ぼします。
逆にイライラしてしまうときには「あぁホル注のせいだ」と自分を制御することもできるで、知っておきましょう。

タバコはやめた方がいいって本当?

ホル注をするなら、タバコはやめた方がいい、つまり禁煙した方がいいです。
血中コレステロール値の増加によって、動脈硬化の危険性が高まり、心臓や血管系の病気のリスクが高まるためです。
なんて偉そうなことを言っても、たっしーは喫煙者です。
すると健康診断でこんな結果になるのでご注意を。笑

肝機能が「要再検査」と出た健康診断結果

デメリットも把握したうえで決断を

このように、ホル注には嬉しい効果だけでなくデメリットや注意すべき副作用もたくさんあります。
それを知らずして、焦る気持ちばかりでホル注を始めるのは絶対にやめましょう。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても遅いです。

打ち始めてからも、定期的に検査をして身体に悪い影響がないかどうかはを確認しましょう。病院によって定期的に血液検査をするように促してくれますが、基本的に自己判断になります。

理想の性別の身体を手に入れるために、不健康になったら本末転倒。
自分の身体の状態を把握して、医師とも相談をしながら、適切な量や周期で治療をしましょう。場合によってはホル注をやめるという選択肢をとる勇気も必要です。

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