【当事者向け】性同一性障害の改名手続きに必要な書類や流れ

2022年9月28日

「改名手続きってどうしたらいいのだろう？」「早く違和感のない名前の入った証明書がほしい」
という性同一性障害の当事者の方に向けて、性同一性障害の方の改名手続き方法や、必要書類について詳しく解説をします。

改名の手続きはどこで出来るの？

改名の手続きをするためには、住所地管轄の家庭裁判所にて、変更許可をもらわなければなりません。
改名の許可を得るためには、単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望などでは足りないとされています。
極端な話「この名前の方がかわいいから」「好きなキャラクターと同じ名前にしたい」などではダメということです。

名前の変更を許可する「正当な事由」として、次のようなものが認められます。

奇妙な名前である
難しくて読めない
同性同名者がいて不便（凶悪事件の犯人と同性同名である場合など）
異性と紛らわしい
神官、僧侶となった（やめた）
外国人と紛らわしい
通称として永年利用した
その他

性同一性障害の場合には「その他」として認められます。

改名に必要なもの

改名に必要な書類関係は以下の通りです。

医師1名の診断書
名の変更許可申立書（裁判所HPから印刷して記入します）
収入印紙800円分
申立人の戸籍謄本
書類送付用の郵便切手（申し立てをする裁判所にいくら分必要かを確認します。万が一多かった場合には必ず返還してくれるので、安心してください。反対に少なかった場合には、後から追加で出せます。）
身分証明書
印鑑
名の変更理由を証する資料
⇒通称で使用している名前宛の郵送物や手紙、公共料金の支払い名義、職場での使用の履歴などの資料があるといいです。
また使用歴は長ければ長いほど有利と言われています。

改名の流れ

必要書類の提出

まず、必要書類を揃えて裁判所に持参するか、郵送します。
不備があると面倒で時間がかかるため、それほど遠くないのであれば持参することをおすすめします。

審判日の通知

後日、家庭裁判所から「●月●日に来てください」と連絡が来ます。
「審判」と言っても、緊張する必要はありません。
裁判官と軽く面談をします。
変更許可申立書に記載してある内容の確認のような話です。

変更許可と戸籍変更の通知

審判の結果、無事に変更許可が下りるとその旨が郵送で通知されます。
そして、戸籍が変更され、その旨も通知されます。
早い場合には2週間程度、遅くても2カ月ほどで通知が来ます。

改名後の手続き

裁判所は戸籍上の名前の変更はしてくれますが、それ以外の手続きは自分でしなければなりません。
変更する必要があるのは以下のようなものです。
・運転免許証
・銀行
・クレジットカード
・国民年金
・各種保険など
戸籍変更後のこまごました手続きの方が結構大変です。

名の変更許可申立書に書く内容

名の変更許可申立書は2枚になっていて、1枚目には申立人の本籍地や住所など基本的なことを記載します。こちらは難しくありません。

2枚目で「申立ての趣旨」と「申立ての理由」を記載します。
「申立ての趣旨」は、穴埋め式で「申立人の名○○を○○と変更することの許可を求める」と○○を埋めるだけでＯＫ。
「申立ての理由」は、まず理由を選ぶ欄があるので「８．その他」に○を付け、（）に「性同一性障害のため」と記載します。

そして本文には性同一性障害の診断を受けていること、現在の戸籍名では日常生活に支障をきたすこと、名を変えても周囲が混乱に陥ることがないことなどを記載します。
実際に書いた例を載せておきますので、参考にしてください。

申立ての理由記載例

申立人は、幼い頃から自分の身体的性別に対する持続的な嫌悪感・違和感を強く持っておりました。
また、女性として扱われることに苦痛を感じ、申立人を女性たらしめるもの（スカートや赤いランドセル、女子トイレの使用など）に抵抗感がありました。
特に、第二次性徴による身体の女性化（胸の膨らみや初潮）には吐き気を催すほどでした。
そして、自分の性自認は「男である」と確信し、20○○年○月○日に○○病院にて性同一性障害と診断されました。
今後、ホルモン療法及び性別適合手術を受ける予定です。今後の治療の進展に伴って現在の戸籍名を使用することは、社会生活上で大いに支障をきたすと考えられます。
また、現在の戸籍名「○○」は女性の性を示唆するものであり、申立人は常に精神的苦痛を感じております。
そのため、現在の通称名である「○○」への改名を希望致します。
なお、家族や友人、職場などでは「○○」で受け入れられており、改名後に現在の生活圏で支障をきたすことはありません。
以上の理由により、名の変更の許可を得たく、申し立てます。