戸籍の「性別変更」に必要な書類と方法、流れを解説

性同一性障害の方の中には「戸籍の性別変更」を目指している方もいるのではないでしょうか?
ここでは性別の戸籍変更について、条件や必要な書類、方法や流れについて詳しく解説します。
これを見れば、スムーズに戸籍変更を行うことができます。

目次

性別の戸籍変更ができる条件は?

戸籍の性別を変更するための条件は「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に定められています。
要件は次の6つです。

①必要な知識及び経験を有する2名以上の医師から「性同一性障害」であることの診断を受けていること

②十八歳以上であること

③現に婚姻をしていないこと

④現に未成年の子がいないこと

⑤生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永久的に欠く状態にあること

⑥変更後の性別の性器に近似する外観を備えていること

①に関しては、性同一性障害の専門医から戸籍変更用の診断書を書いてもらう必要があります。厚生労働省で定められている事項が書かれたものでなければなりません。
注意したいのは、身体的治療に入るためや性別適合手術を行う前にもらった診断書とは別の書式のものになる点です。
身体的治療のための診断書を書いてもらった医師に「戸籍変更用の診断書がほしい」と言って書いてもらいましょう。

②は純粋な年齢条件なので説明は省きます。民法改正により2022年4月から18歳に引き下げられました。



③は「現に」婚姻をしていないことなので、未婚か離婚している状態である必要があります。
日本では同性婚が法律的に認められていないため、婚姻をしたまま戸籍変更をすることができないのです。

④に関しては「現に」そして「未成年の」子がいないことが条件となります。
「未成年の子がいる場合家庭内に混乱を生じさせ、子の福祉の観点から問題を生じかねないなどの配慮に基づくもの」とされています。

⑤に関しては性別適合手術を受けていれば、OKです。
MTFであれば精巣摘出後(除睾術)を行っていること、FTMであれば子宮・卵巣摘出手術を行っている必要があります。

⑥に関して、MTFの場合は陰茎切除の必要があります。造膣は必須ではありません。
FTMの場合は、男性ホルモン治療によって肥大したクリトリスが、小さな陰茎のような外形になると捉えられるため、上記の子宮・卵巣摘出手術を行っていればOKです。

性別の戸籍変更はどこでする?

性別の戸籍変更はどこでする?

戸籍変更は、ご自身の住所地管轄の家庭裁判所で申請を行います。

次に紹介をする必要書類をそろえて、管轄の家庭裁判所に郵送または持参して提出をしましょう。
管轄の家庭裁判所は、裁判所HPから調べることができます。

性別の戸籍変更に必要な書類は?

戸籍の性別変更のために用意しなければならない書類は以下の通りです。

①2名の専門医からの診断書

②申立書(こちらからダウンロードできます。記載例もあります。ほぼコピーで問題ありません。)

③戸籍謄本(出生から全ての情報が記載されている「全部事項証明書」、そして戸籍法改正前からの情報が載っている「原戸籍」)

④性別適合手術を受けた証明書(手術後にもらえます)

⑤性器の外観に関する診断書(こちらも病院でもらえます)

⑥収入印紙800円

⑦連絡用の郵便切手(管轄の家庭裁判所によって金額が異なるため、確認をしましょう。多く払いすぎた分は戻ってきます。)

①④⑤は医者が用意してくれるので、あまり気にしなくて大丈夫です。診断書の発行料が数千円かかります。
③は、全部事項証明書であることと「原戸籍」(はらこせき、げんこせき)であることに注意していください。原戸籍とは戸籍法の改定によって戸籍を電子情報に保管するようになったのですが、その元となった紙の戸籍です。
役所でもらう際に、よく確認して分からない場合には、職員に尋ねましょう。

上記の書類をそろえたら、郵送か持参で管轄の家庭裁判所に提出します。
不備があったらその場で訂正などがすぐできるので、あまりに遠くない場合には持参をすることをオススメします。

性別の戸籍変更の流れ

必要書類をそろえたら、家庭裁判所に提出します。その後の流れは下記の通りです。

家庭裁判所から審判日の連絡

書類に問題がなければ、1週間ほどで家庭裁判所から「●月●日に来てください」と書面で連絡が来ます。
最近では、書面に不備がなければ審判がないことも。実際横浜家庭裁判所で戸籍変更手続きを行った方で、「回答書」という質問用紙に返送をするだけだったというケースもありました。

審判日に家庭裁判所へ

指定された日時に家庭裁判所に出向きます。
「審判」と言っても、裁判官と軽く面談をするだけです。申立書に書いてあることを確認して、裁判官次第では雑談のような形で終わることも。
あまり緊張せずに行きましょう。

家庭裁判所からの戸籍変更の通知

1週間~2週間ほどすると、郵送で戸籍変更の通知が来ます。
戸籍変更の審判が下りると、本籍地の役所に連絡が行きます。
概ね1~2週間ほどで戸籍データが変わるようです。

諸々の変更手続き

実はここからが結構めんどくさかったりします。
まずは役所に新しくなった戸籍を取りに行き、免許証、保険、銀行、クレジットカード、年金……などの性別変更手続きを行う必要があります。

申請から諸々の手続きが終わるまでは概ね1カ月を見ておきましょう。
書類の不備などがあれば、伸びる可能性もあります。

戸籍変更の注意点

戸籍変更の注意点

性別の戸籍変更をする際に、注意すべき点というか意外な点が2つあります。


一つ目は、元の戸籍から除籍されることです。
自分が筆頭者となる新たな戸籍が作られることになります。

二つ目は戸籍上の「女」が「男」になるだけ、「男」が「女」になるだけ、という点です。どういうことでしょうか。
仮に元々戸籍上は女性で兄がいたとしましょう。兄は戸籍上「長男」となっており自身は元々「長女」と記載されています。
この状態で、性別の戸籍変更が行われるとどうなるか。
「長男」となるのです。一家に長男が2人いるような状況になるのです。
仕方ないですが、最初はちょっとびっくりします。

名前の変更も一緒にできるの?

性別の戸籍変更の際に、名前の変更も一緒に行いたいということもあるでしょう。
しかし、名前の変更は名前の変更で、別の手続きをしなければなりません。
どちらも管轄の家庭裁判所に申請をするのですが、全く別の案件として提出する必要があるので、注意しましょう。

まとめ

性別の戸籍変更について解説しました。
審判の紙が来たときは、なかなか感慨深いものです。

ただ1つ忘れてはいけないのが「戸籍の変更が人生のゴールでない」ということです。
どうしても戸籍を変更することに必死になってしまいますが「戸籍を変更して何がしたいのか」「戸籍を変更してどんな人生を歩みたいのか」を考えてみてください。
そうしないと、戸籍変更ができて手続きが落ち着いた後で若干燃え尽き症候群的な現象に陥ることがあります。

ぜひ一度立ち止まって「性別の戸籍変更をした後の自分の人生」を思い描いてみてください。

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