身体の性別が決まる仕組み、性分化のメカニズムとは?

そもそも身体の性別ってどうやって決まっているのか?

確かに、身体が「男性/女性」ってどのようなメカニズムで別れているか、ってあまり意識したことないですよね。
ここでは身体が「男性/女性」区別される性分化のメカニズムと、そのメカニズムに関する障害である「性分化疾患」について紹介をします。

目次

身体の性別はどのように決まる?

身体の性別はどのように決まる?

身体の性別は一般的に、胎内で三段階で男女に分かれ、決まっていきます。

①出発点は染色体(受精段階)

最初の性分化は受精段階で起こります。
それは染色体の種類によるものです。

ヒトの染色体は、46本。2本組になっていて23対になっています。
そのうち2本(1対)が「性染色体」と呼ばれ、遺伝子レベルでの性別を決定づける要素となります。
一般的に、その性染色体が「XY」であれば遺伝的男性、「XX」であれば、遺伝的女性となります。

これは受精する精子と卵子の性染色体によって決まるものです。

精子と卵子は、減数分裂という特別な分裂過程を踏み、23本の染色体になります。
精子は、X性染色体をもつX精子とY染色体をもつY精子の2種類に分裂。
卵子も分裂をしますが、こちらはどちらもX染色体をもつ、X卵子となります。
受精の際に、卵子のX染色体が、X性染色体をもつ精子と受精するか、Y性染色体と受精するかで、「XY」(遺伝的男性)になるか「XX」(遺伝的女性)になるかが決まるのです。

②性腺の分化

性染色体によって遺伝的に性別が決まっても、まだ男女とちらかに決まるわけではありません。
次は、性腺が卵巣になるか精巣になるかの分かれ目です。

この性腺の分化がこの後の身体の性別を作り上げるのに、大きな影響を及ぼします。
Y染色体の中には「SRY遺伝子」というものが存在し、その遺伝子がないと性腺が精巣になることはできません。
Y染色体がない場合には「SRY遺伝子」も存在しないので自動的に卵巣になります。
つまり、身体的に男性になるにはY染色体の中にある「SRY遺伝子」が必須なのです。

③内性器の分化

次に、内性器が女性のものとなるか男性のものとなるかの分かれ目です。

内性器とは、女性の膣・子宮など、男性の前立腺や精管、精巣など。
胎児の6~7週目の段階では内性器のもととなる「ミューラー管」(女性の内性器のもとになるもの)と「ウォルフ管」(男性の内性器のもとになるもの)を2本ずつ持っています

性腺の分化により精巣が発達すると、精巣からミュラー管抑制因子(AMH)というものと男性ホルモン(テストステロン)が分泌されます。
つまり、女性の内性器のもととなるミュラー管を抑制することで女性器の発達が止められ、反対に男性ホルモンにより、ウォルフ管が発達をします。

反対に、性腺の分化の段階で卵巣に分かれた場合には、ミュラー管抑制因子が分泌されません。
そのため女性の内性器の発達は抑制されずに、そのまま女性の内性器ができます。
また男性ホルモン(テストステロン)が働かないので、ウォルフ管ができずに、男性の内性器はできません。

④外性器の分化

次に外性器が分化します。
外性器とは女性の陰核や陰唇、男性の陰茎と陰嚢のことです。

胎児の8週の段階ではまだ男女の外性器は全く同じでどちらの性にも分化できる状態にあります。
性腺の分化によって、精巣が発達すると男性ホルモンによって外性器が男性になり、陰茎や陰嚢が形作られます。
反対に、卵巣が発達したら場合には男性ホルモンが働かないため、外性器が女性になり陰核や陰唇ができます。

ここまでで胎児として12週です。
基本的にはこのような段階を経て、身体の性別が決まります。

しかし、この段階で何かしらの異常が起こることも。
それが「性分化疾患」です。

性分化疾患とは?

性分化疾患とは?

性分化疾患とは、内性器や外性器が典型的な形ではない状態で生まれてくる、先天性の疾患です。


性分化の段階で何かしらの異常が生じることにより、起こるものです。
通常、性別は出生時の外性器の特徴で判断するため、性分化疾患の場合には性別の判断が難しくなります。
性分化疾患は「インターセックス」という言葉で表されることもあります。
この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?

インターセックスとは?

「インターセックス」は日本語で性分化疾患のことです。


しかし、日本語では「中性」や「男でも女でもない」という誤解を生むことが多く、あまり好まれて使われていません。
正式には「DSD」と呼ばれます。

性分化疾患の例

性分化疾患の中にもいくつか種類があります。ここでは3つ例を紹介します。

アンドロゲン不応症(AIS)

アンドロゲン不応相は、男性ホルモンの受容体が一部または全部が欠如していることで性分化の③④の段階で、異常をきたす疾患です
性染色体がXY(男性型)で精巣もあるにもかかわらず、性器が女性型、または男性型、女性型ととちらにもとれないに発達してしまう症状です。

ターナー症候群

ターナー症候群とは、通常XXの性染色体で構成されるはずの女性の身体が、何らかの異常で「X」単体となる疾患です。
これにより、二次性徴時の異常や、月経異常などが見られます。
また性腺機能の不全により、不妊となることが多いです。

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群とは、通常XYで構成される男性の身体が、何らかの異常で「XXY」とX染色体が多い状態になる疾患です。
思春期の遅れや、無精子症などの性腺の機能の不全、男性にもかかわらず胸が膨らむ「女性化乳房」などをの症状が見られます。

性分化疾患とLGBT

性分化疾患とLGBT

性分化疾患は、LGBTやセクシャルマイノリティの1つと勘違いをされがちです。


しかし性分化疾患は、性分化の段階で身体的におきる異常のことであり、LGBTなどのセクシャルマイノリティの定義のもととなる「性自認」や「性的指向」は全く別問題として考えなければならないものです。
無理にカテゴリ分けをすることで当事者や周りの人を傷つけてしまわないよう、正しい知識を取り入れておきましょう。

このブログではLGBTなどのセクシャルマイノリティ、性分化疾患などについて情報を発信していきます。
ぜひ他の記事も読んでみてください。

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